「バス待ちのテラス」 いつものブレンドを注文し、 お気に入りのカフェーのテラスの席に腰掛け外を眺める。 フッとため息をついて、おもむろに鞄から手探りで物を取り出す。 今日はノートパソコン。 昨日は文庫本、 一昨日はメモ帳、 この前は、仕事の資料だったっけ… 毎日違う物を取り出しては、毎日違う事をしている。 …だけど、毎日同じカフェー、同じ席… 一時間おきのバスを待つ時間、 毎日変わる珈琲のブレンドの味わいを 舌で当てながら少しずつ口に含み喉に流す。 今日は酸味が強いからモカベースだな。 昨日は苦みが強かったから、キリマンジャロベース、 一昨日はブラジル、 この前は、ジャマイカだったっけ… 毎日違う味わいを味わいながら、当てずっぽうの利き珈琲をして その都度マスターに笑われたり誉められたり… 額に手を当て何事かを考える。 無心を心懸けてはいるが、 あれこれやりたい衝動が次々とこみあげてくる。 今日は詩作にふけようか、 または小説の続きを書こうか、 溜まっているメールを読もうか、 はたまた、エッセイを綴ろうか… バス待ちの短い時間に色々したいことがありすぎて 画面上のマウスカーソルがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり… 藤次郎正秀